Firefox Hacks 翻訳日記

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zoom RSS Web 2.0 としての Firefox

<<   作成日時 : 2006/09/30 23:00   >>

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Web 2.0 という概念は主にウェブサイトやウェブサービスに対するもの、という事は百も承知の上で、あえて「Web 2.0 としての Firefox」を論じてみたい。

Tim O'Reilly による What Is Web 2.0、あるいは その日本語訳 をお読みになった方なら同意していただけるかと思うが、Web 2.0 で何がわかりにくいって、例として上げられているのが外国のウェブサービスだけだ、という点ではないだろうか。ひるがえって、本邦の有名どころでこれぞ Web 2.0 と言えそうなのは、はてな くらいしか思いつかない。ここで、ウェブサイトないしウェブサービスをウェブブラウザと読み換え、Firefox がいかに Web 2.0 であるかを検証することによって、Web 2.0 に対する理解を深められるのではないか、というのが本稿の目的である。

以下、"What Is Web 2.0" をなぞる形で論を進めていく。

1. プラットフォームとしてのウェブ

このセクションは一番長く、「3つの事例を掘り下げ、Web 1.0とWeb 2.0の本質的な違いを浮き彫りにして」いく大事なセクションなわけだが、多くの人はここで挫折してしまうのではないだろうか。例としてあげられているのが、
 Netscape 対 Google
 DoubleClick 対 Overture/AdSense
 Akamai 対 BitTorrent
であり、Netscape 対 Google はまだわかるとして、他の二つの対比では、例示されている対象のどちらか、あるいは両方ともに馴染みがない場合、わかりやすいわけがない。

ここでは、「Netscape 対 Firefox」を考えてみればいい。Netscape も Firefox もブラウザという点では同じであるが、Netscape が目指したものは「インターネット・スイート」であり、ツールバーのカスタマイズさえできない「パッケージソフトウェア」、すなわち Web 1.0 だ。一方、Firefox はブラウザに特化した上に、必要最低限の機能+拡張機能による機能追加、という戦略を当初から採用している。さらに、一般ユーザーには見えにくい点ではあるが、「開発プラットフォームとしての Firefox」という側面も着実に進化させている。

また、Web 2.0 を語るときに欠かせない、「ロングテール」というキーワードもこのセクションで出てくる。「ウェブの過半数を占めている小さなサイトが、総体として大きな力を生み出す」という概念だが、IE に満足できない個人ユーザーをターゲットにして膨大な数のダウンロードを達成した、というのが Firefox におけるロングテールだと言える。

「Netscape も IE も Web 1.0 であり、Firefox は Web 2.0 なのだ」というのが、本論の要旨となるだろう。

2. 集合知の利用

このセクションでは、集合知の一例として、Linux、Apache などのオープンソースがあげられている。
また、ブログを「Web 2.0時代の特徴」としており、ブログと従来の個人ホームページとの違いを述べているわけだが、これも今一つわかりにくい話に思える。前述の「Netscape も IE も Web 1.0」を考えていただければ、つまるところ「ささいな違いなんだけど、使いやすいんだよねー」なのではないだろうか。

なお、Firefox における集合知利用として、オープンソースによる開発はもちろんの事、 Spread Firefox も忘れてはならない。

3. データは次世代の「インテル・インサイド」

Firefox を支えるデータベースと言えば、バグのデータベースである Bugzilla だが、ここでは拡張機能のデータベースでもある AMO をあげておきたい。以前から言っている事だが、IE7 が出たとしても、拡張機能の豊富さでは Firefox が一歩も二歩もリードしていると考える。
また、残念ながら Firefox 2.0 ではドロップされたが、Places もデータベース重視の姿勢を表わしたものである、と言えるだろう。

4. ソフトウェア・リリースサイクルの終焉

このセクションの後半では、「オープンソースの開発慣行にならい、ユーザーを共同開発者として扱う」という記述がある。「2. 集合知の利用」でも触れられているが、Web 2.0 を考えるとき、オープンソースの手法が導入されているか、は重要なポイントだろう。

5. 軽量なプログラミングモデル

ここで言及されている AJAX は JavaScript と XML だが、Firefox の UI である XUL もまた JavaScript と XML であると言える。また、「ハッキング可能でリミックス可能なデザインを心がける」という点も、Firefox を Netscape と峻別するデザインコンセプトである。(なお、本稿における Netscape は、Communicator 以前のバージョンを指すと考えていただけるとわかりやすいと思うが、筆者は Firefox をベースにした Netscape 8.x まで含めて考えている。N8 には、ハッキング可能でリミックス可能なデザインという視点が欠如しているのだ)

さらに重要な点は、「組み合わせによる革新」というキーワードだ。Mozilla Suite の時代からあった検索プラグイン (余談だが、Firefox 2.0 からは「検索エンジン」という呼称になる筈) をツールバーに組み込んで使いやすくした Firefox と、Google や Amazon とのアフィリエイトという組み合わせは、今や 年間数十億円 の収入を生み出している。これは、現 Mozilla Foundation の executive director である Frank Hecker でさえ、Setting Up Shop: The Business of Open-Source Software短縮版) を書いたときには想像すらしなかった事態だろう。何しろ、初稿が書かれた 1998年5月には、Google は存在していなかったのだ (Google の設立は 1998年9月)。

6. 単一デバイスの枠を超えたソフトウェア

この点について Firefox は Opera の後塵を拝しているわけだが、ケータイ版 Firefox が必要かどうか、現時点で個人的には疑問である、とだけ言っておこう。ケータイに搭載されても、拡張機能が使えないようでは Firefox の意味がない。

7. リッチなユーザー経験

この最後のセクションで、Firefox に関する言及が初めて出てくる (3. で Greasemonkey に関する言及はあるが)。そして、ウェブアプリケーションの代表として Gmail と Google Map、そして Flickr などの名前が出てくる。
"What Is Web 2.0" が書かれたのは 2005年9月30日 (ちょうど 1年前!) であり、現在では Google Notebook や Google Spreadsheet と、Google によるウェブアプリケーションの数は一年前よりも確実に増加している。しかも、Google Notebook に至っては、最初から Firefox の拡張機能とセットで登場したのだ。
Firefox 2.0 のフィッシング対策機能が Google のサービスを使用している事などから考えれば、今後 Firefox と Google との連携は強固になっていく可能性が高いだろう。


以上、「Web 2.0 としての Firefox」を考察してみた。

結論として、Firefox は Web 2.0 なのだ、と言いきってしまおう。
Web 2.0 の旗手である Google の各種ウェブサービスが最大限に実力を発揮できるブラウザは、Firefox に他ならない。Google に限らず、新しいウェブサービスに対応した拡張機能がいくつもリリースされ、ユーザーの選択によってさらに便利になっていく。
ウェブメールとブログとで、メーラーも HTML エディタも使用頻度が激減した現状から過去を振り返れば、Suite 路線を捨ててシンプルなブラウザに徹した Firefox の方向性は正解であった、と言えるだろう。そして、拡張性を重視したそのデザインコンセプトや、草の根マーケティングに代表される集合知の利用もまた。

Firefox ユーザーが、これはすごい、と思うウェブサイト。Firefox と親和性の高いウェブサービス。 ―― それが Web 2.0 であると独断する。

なお、ここまで読んできて、我田引水もしくは牽強付会が過ぎる、と感じられる方もいるだろう。
"What Is Web 2.0" のサブタイトルである "Design Patterns and Business Models for the Next Generation of Software" (邦題: 次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル) は、Firefox を論じるのにこそふさわしい、という点を指摘しておく。

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コメント(2件)

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> Firefox ユーザーが、これはすごい、と思うウェブサイト。Firefox と親和性の高いウェブサービス。 ―― それが Web 2.0 であると独断する。

面白い喩えですね。ユーザが体験する情報の見え方や連続性が「これまでと違う」ように感じるのが、Web 2.0 なのかもしれません。

Fx 的ではないですが、最近のものでは N.Y. Times のリーダー・クライアントも面白いと感じてます。98 年頃?にあった PointCast を想起する部分もありますが、よりコンテンツに近い (電子メディア的な UI を意識させない) 見せ方をしているという点において。
http://firstlook.nytimes.com/

ただ、やはりマスとして、そういう自然なインターフェースにたどり着くまでの大変さが今はまだあるような気もしていまして、そこをどう乗り越えるかがひとつの課題なのでしょうね。
Gashu
URL
2006/10/01 00:20
Gashu さん、池田です。ご無沙汰しております。
コメントありがとうございます。

ある程度の要件はあっても、定義自体が存在しない Web 2.0 ですから、
ユーザーの受け取り方に依存する部分が大きいのかな、と思っています。

ちなみに、
http://www.itconversations.com/transcripts/168/transcript-print168-1.html
で読める Tim O'Reilly のプレゼンが "What Is Web 2.0" の原形かも。
http://www.itconversations.com/shows/detail168.html
の PDF スライドを見るだけでも楽しいです(^^;

N.Y. Times の方は、Windows Presentation Foundation を使っている、
と言う時点で XP と Vista 限定になっちゃいますね。
オフラインで写真付き記事が読める、というのは
US ではニーズがあるのかなー、とか思ったり。
池田
2006/10/01 16:41

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