Firefox Hacks 翻訳日記

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zoom RSS Mozilla の浸透と拡散

<<   作成日時 : 2007/09/21 23:50   >>

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読者の皆さんはどうかわからないが、私は中学・高校の頃、全人生を賭けて SF 小説を読んでいた。
毎月買っている S-F マガジンは、面白い小説と記事が満載だった。(新幻魔大戦も連載されていた)
文庫と言えば、創元と早川しかなかった。(後にサンリオが加わる)
ロボットが出てくるアニメは飽きるほど放映されていたが、みんなプロレスものだった。
SF 映画の最高峰が「2001年宇宙の旅」であることは衆目が一致していたが、ストーリーが難解だった。

1975年 (昭和50年)、神戸で開かれた日本SF大会 SHINCON。
パネル討論会のテーマが「SFの浸透と拡散」だった。
二年前に、小松左京著の「日本沈没」が大ベストセラーとなり、
また、この二年後に映画「スター・ウォーズ」 (エピソードIV) が公開され、
SF がキャズムを超えようとしていた時代である。

残念ながら私は SHINCON には参加していなかったのだが、
スタッフだった岡本俊弥さんが書いた Infinite Summer該当部 によれば、

荒巻義雄/高斎正/小松左京/田中光二/半村良/平井和正/星新一/眉村卓/矢野徹/司会・筒井康隆

と、当時の日本 SF 作家ほぼ総出演な豪華パネラーだったようだ。

さて、エリック・レイモンドの 伽藍とバザール の「エゴブー」を引くまでもなく、
SF ファンダムとオープンソースには共通点が多い。
未読の人のために、「エゴブー」のくだりを引用すると;

Linux ハッカーたちが最大化している「効用関数」は、古典経済的なものではなく、自分のエゴの満足とハッカー社会での評判という無形のものだ(中略)。こういう形で機能するボランタリー文化は、実はそんなに珍しいものじゃない。ぼくが長いこと参加してきたもう一つの例は、SF ファンダムで、ここはハッカー界とちがってボランティア活動の基本的な動機をはっきり「エゴブー」(他のファンたちの間で自分の評判を高めること)だと認識している。

Wikipedia の Egoboo にもあるように、これは "ego boost" の省略形で、
もともとは「自分の名前が印刷媒体に載ったのを見て得られる喜び」だった。
ファンダムでの活動が認められた証、というわけだ。
それなりの業績をあげなければオフィシャルな印刷媒体にはとりあげられないわけで、
ただの自己満足とは違うのだが、SF ファンダムで有名になっても
一般社会で有名になったわけではない、という点がエゴブーという屈折した表現の由縁だろう。

Firefox で言えば、拡張機能の作成はエゴブーの最たるものだと思っている。
SF ファンダムでの活動と違って、全世界が対象のエゴブーが、比較的簡単に得られるのだ。

また、「カウンター・カルチャーとしての SF とオープンソース」とか
「プロシューマー (生産する消費者) としての SF ファンとオープンソース貢献者」とか
比較文化論のネタとして SF とオープンソースというのは、いくつか切り口があると思う。
(どなたかやってみませんか?)

ここでようやく本題。
Firefox の成功によって、Mozilla は「浸透と拡散」の時期を迎えているのではないだろうか。
Mozilla 1.0 の頃は、もじら組 を中心としたコアユーザーの集団が Mozilla を支えていたわけだが、
現在 Firefox を扱うブログは枚挙にいとまがない。
だが、数が増えたからと言って、質も向上しているかと言えば疑問符が付くところではある。
(これは自戒も込めて)

一昔前は、イベントと言えば年に一回のもじら組パーティくらいしかなく、
ここでのトピックスを追っかけていれば話についていけたわけだが、
今や毎月のように何らかのイベントが行なわれていて、
私のような社会人が全てに参加するには有給休暇がいくらあっても足りない。

そして、SF ファンダムにおいて、ヒロイックファンタジーとハード SF とでファン層が異なったように、
同じ Mozilla 製品を使っていても、Firefox と SeaMonkey と Camino の全てを常用している、
という人は少数派だろう。
個々の製品のユーザーを、「Mozilla ユーザー」という一つのカテゴリでくくるのは
もはや適切ではないと私は思っている。

では、「浸透と拡散」の次に来るものは何か?
「変質と解体」である。
これは、「浸透と拡散」のアンチテーゼとも言える表現であり、
SHINCON の翌年あたりから流行した言葉だと記憶している。

「浸透と拡散」と言えば聞こえはいいが、その実態は「変質と解体」なんじゃないのか、
というのが趣旨であり、同じ事象の光と影を指している、とも言えよう。

ある意味、Mozilla → Firefox という流れも「変質と解体」そのものなわけだが、
Firefox 2 → Firefox 3 におけるアドオン (拡張機能とテーマ) の対応状況によっては
アドオン・コミュニティにも何らかの地殻変動が起こるかもしれない。
(Sage の Fx3 対応がバロメーターか?)

さらに言えば、Thunderbird の分離新会社設立 を受けて、
Mozilla Corporation が Firefox Corporation になり、Mozilla Japan が Firefox Japan になり、
次の Mozilla 24 は Firefox 24 になるかもしれない。
いや、まじめな話、Mozilla 24 で Thunderbird やメーラーの話って出てないでしょ?

願わくは、Mozilla が「変質と解体」のない「浸透と拡散」を遂げん事を。


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。絶滅危惧IA類と申します。
SF 大会、懐かしいです。
今も続いているのは知っていますが。
そういえば SF ファンダムの世界では BNF って言葉もありましたよね。
拡張作者で有名な piro さんとかも、Firefox の世界での BNF なんでしょうねぇ。
ちょっと懐かしくなって、レスさせていただきました。

P.S.
 今でも筒井康隆さんの作品や、荒巻義雄さんの「神聖代」は私にとってはバイブルみたいな存在ですね。
絶滅危惧IA類
2007/09/22 06:45
絶滅危惧IA類さん、はじめまして。ブログ作者の池田です。

> 拡張作者で有名な piro さんとかも、Firefox の世界での BNF なんでしょうねぇ。
そう言えばありましたね、BNF (Big Name Fan).
でも、Piro さんの場合は、Firefox 本を出してたり、雑誌に原稿書いてたりと、
ファンよりはプロに近いのではないかと思ったり。
プロとセミプロとファンとの境界が曖昧なのも共通点でしょうか。

エントリ書くためにいろいろ調べている間に、
堀晃さんの「太陽風交点」が創元で再刊されるのを知ったので、
(もしかしてもう出てるのかな?)
http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3762
久しぶりに読んでみようと思います。
池田
2007/09/22 15:20

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